【クトゥルフ神話TRPGシナリオ】地下街の黒い水【シナリオ前半】
汚水発生現場
現場に到着すると、腐臭漂う真っ黒な汚水が足元を浸すように広がっているのを目にする。通行人たちは鼻を押さえながらも珍しい光景に携帯電話を向けて動画を撮影している。すでに汚水の流出は止まっているようで、汚水の浸潤範囲が広がる気配はない。ビルの清掃職員と思われる人々が通行規制を敷いてモップとバケツを使った汚水の処理を始めている。
初めの到着:PC3
PC3は汚水を採取することができる。収入が一定以上あれば、これを分析機にかけることができるだろう。もちろん自分自身で〈化学〉や〈生物学〉を使って分析してもよい(詳細な結果はシーン終了後に得られる)。他の行動として、聞き込みや映像撮影などを行うことができるが、これらは他のPCにも共通して可能な行動なため次に記述する。
探索者たちの合流
探索者たちは現場で合流することになる。PC1はPC2に下水の修理を依頼した以上、発生現場から推測される損傷箇所を伝えなければならない。そこで汚水の発生箇所を確かめる必要がある。
汚水の発生箇所を確かめる
聞き込みによる方法:〈幸運〉
発生箇所が非常扉だったことがわかる。同時に、汚水の発生前後に非常扉の付近に誰かいたかもしれないという曖昧な証言を聞くことができる。(この人物はPC1の部下「櫻井」である。人物特徴などは「櫻井」の性別決定に応じて行い、詳しく聞き出せばPC1に〈アイディア〉を振らせて「櫻井」だと認識させよう。これが「櫻井」だとわかった瞬間SANチェック0/1D3を行う)
監視カメラによる方法:判定不要
発生箇所が非常扉だったことがわかる。同時に、汚水が発生する直前に何かに気づいて非常扉の前に立ち止まる「櫻井」の姿を目にする。「櫻井」が訝しげに扉をにらんだ瞬間、扉が外れたように倒れ、「櫻井」の姿は扉の下に忽然と消えてしまう(SANチェック1/1D6)。もちろん彼女は汚水の処理後も見つかっておらず、ただ扉に倒されたわけではないことは間違いない。
非常扉へ向かう
調査を終えると、辺りの汚水は一通り清掃されている。すぐに非常扉へ向かうことができる。
非常扉を開くと視線の先に黒い水が残っているのだが、それがある一点に向かってあつまっていき、床に吸い込まれるように消えてしまう。(SANチェック0/1D3)
汚水が消えた地点
汚水が消えた地点をたしかめ、これを水道局が持っている地図と照らし合わせれば、この地下にたしかに下水道があることはわかる。床に大きなヒビが入っており、なんらかの力で下水道からこの地点まで亀裂が走ったことがわかるだろう。
先日発生した地震の影響ではないか?
条件:〈アイディア〉
探索者の誰かが〈アイディア〉に成功すれば、先日震度4程度の中規模地震が発生したことを思い出すことができる。地震の影響で腐食した下水道に亀裂が入り、ガスなどの噴出で亀裂が拡大したとすれば納得することができるだろう。
これはただの汚水流出騒ぎではない
PC3の〈知識〉〈人類学〉〈民俗学〉〈歴史〉など
PC3が自ら一点に集まって消えていく汚水を目撃すれば、上記の判定を試みることができる。これに成功すれば、この黒い水が「呑虞(のぐ)」と呼ばれる怪異だと確信する。PC3がいない少人数プレイの場合、図書館などで調査したり、民俗学関係者に話を聞きに行き交渉技能に成功すれば次の情報を得ることができる。
呑虞(のぐ)
突如泉のように湧き出す黒い水の怪異。下水道がなかった江戸時代から伝承が伝わっており、突如現れては消えてしまう怪異として伝わっている。実際の被害としては、この黒い水に足をすくわれたものが、怪異の名称通り水に呑まれてしまうという現象が伝わっている。幸いにして今回は呑まれた人物はいないようだ。しかし呑虞が下水道に解き放たれたということは、このまま放置していれば今後下水道を使って怪異が移動して各地で被害が生じる恐れがあると推測できる。
→〈アイディア〉地震によってヒビが入ったのは、ここではなく呑虞が封じられていた場所に違いない。この現場は呑虞の手によって引き裂かれたのだ。
怪異話だなどと簡単には信じられない
当然、他の探索者はこんな話を信じはしないだろう。このまま最寄りのマンホールから下水道の状態を確認しに向かうことになるはずだ。(もしも動く水を見て怪異説に共感した探索者がいれば、ここで歩調を整えることもできる)マンホールから地下の探索を行った場合、PC2は地下でチームごと呑虞(ニョグタ)に遭遇する(SANチェック1/1D20)。この場合、チームメンバーの数名が呑虞に飲み込まれ、運が悪ければPC2もここでロストすることになる。
PC2の地下探索を止める手段としては、ここでPC3が〈説得〉などを試みてもよいかもしれない。可能ならプレイヤー間の相談で展開を決めるのが理想的だ。
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